【認定】特定非営利活動法人SEEDS Asia

2023年度JICA課題別研修「コミュニティ防災」への講師派遣【日本・本部】

 

2023年度JICA課題別研修「コミュニティ防災」が、一般財団法人日本国際協力センター(JICE)関西支所のコーディネートにより、3年ぶりに開催されました。この研修は、コミュニティ防災に焦点を当て、実践事例や講義を通じて知識を深めるもので、約一カ月間に亘って国内の多様な場所・講師群による視察や研修が計画されています。SEEDS Asiaは、本研修における「海外のコミュニティ防災」科目の講義を担当し、去る11月13日に大津山光子(事務局長)が講師を務めました。

 

本研修の対象者は、住民主体の自主防災組織の設立やコミュニティ防災活動を推進する立場にある機関の政府職員の方々で、9か国(※)から9名が参加していました。今回、担当した授業では、コミュニティ防災において直面する具体的な課題や現地の実践事例について学び、理解を深めることを期待し、ワークショップ形式で授業を展開することにしました。

 

今回は、人種・大陸・宗教も異なる国々から集まっているメンバーでした。多様な背景を持つ集団が、共通の課題認識と解決策を共に考えていくためにケーススタディとして一つの実例を準備し、SEEDS Asiaがコミュニティ防災を進めるための基本的な8つの実践ツールを活用しながら「自分たちが村の防災委員会メンバーだったらどうする?」という想定で、協議・分析し、計画を立てていく進め方としました。

 

一言で「コミュニティ防災」と言っても、日本のコミュニティ防災と研修に参加する国々のコミュニティ防災は異なる点がいくつもあります。まず「コミュニティ」の定義が日本とは異なることが挙げられます。地理的な近所の感覚の違いはもちろんですが(今回の参加国にはいませんでしたが、季節によって500キロを移動するというケースもあります)、コミュニティという言葉が、コミュナル(民族・宗教・身分などを共有する集団)との関連性を想起させてしまうもあります。そのため、参加メンバーにはコミュナルなものとは異なることを説明し、実践においては多様で包摂的であることに配慮することを丁寧に伝えることが重要になります。

 

さらに、日本で災害対策に必要なチカラとしてよく使われる「自助・共助・公助」についても、政治的・経済的な不安定さを抱えている国の多くは、公助が機能していない、あるいは十分ではないケースが多いということが大きな特徴として挙げられます。そのため、自助や共助で対応する範囲が大きくなり、公助の代替として国連やNGO、大学などの「N(縁)助:ネットワークのチカラ」を得ることの重要性が挙げられます。これは、ステークホルダー分析において、参加者の議論の中でも日本との大きな違いとして把握されました。

 

このように、日本の事例を知ると同時に、他国の事例を含めて学ぶ機会を持つことで、彼らの実践がより現実に即した方法へと昇華され、広がり・浸透していくことを願っています。また、わたしたちにとってもJICA研修はコロナ前ぶりではありましたが、毎回、出会ったことのない国々の方々に出会う機会をいただき、とても貴重な学びの機会となっています。コーディネーターとしてご依頼いただきましたJICEの皆様にも改めて感謝申し上げます。

(※:アルメニア、タジキスタン、トリニダード・トバゴ、トンガ、ニウエ、ブラジル、ベリーズ、ボツワナ、ミクロネシア、モルディブの内、1か国が不参加となり9名が参加)

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2023/11/16

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