インド事業概要
■背景
インドは、2013年の災害による死者が7,781人でアジア2位(赤十字国際委員会)と、アジアの中でも災害に脆弱な国です。さらに今後、地球温暖化の影響で、熱波や大雨の頻度の増加、台風の強度の増大が予測されています。また、インドでは急速な人口増加や経済発展により、地球温暖化の主要因であるCO2排出量が世界第3位(2013年、赤十字国際委員会)となるなど、大気汚染問題が深刻化していると同時に気候変動にも影響を及ぼしています。
2014年8月バラナシ市と京都市は安倍内閣総理大臣及びインドのモディ首相立ち合いの下、パートナーシティ提携意向書に調印し、特定分野の両市間の交流促進を図り、協力関係を構築して行くことが確認されました。この協定に基づき、京都大学はバナラシヒンドゥ大学、バラナシ市と共にバラナシ市の災害リスクについて調査しました。この調査によると、バラナシ市では今後、雨季の洪水、熱波などの災害が起こることが予測されていますが、住民の防災への意識が弱く、また、全市的な災害対策が十分になされていないことから、実際に災害が起きた時に被害が大きくなることが考えられます。
このような背景から、日本の被災経験を生かした技術協力をはじめとして、二国間で協力しながらバラナシ市の防災力を強化していくことが求められています。
■事業の目的
学校や地域住民を巻き込んだ防災活動を行うこと、また市の体制に災害対策を組み込むことで、将来起こりうる災害からバラナシ市民を守ることを目指します。
■インドでの事業概要
1.クライメートスクールの整備
「クライメートスクール」とは自動気象観測装置などの機材を設置し、その観測情報をもとに防災教育/気候変動教育を行う学校のことで、防災情報発信の拠点となります。クライメートスクールはバラナシ市内の5つの区に各一校ずつ指定します。クライメートスクールは地域住民に防災情報や気象観測情報を提供し、住民の防災意識を向上させていくことも求められます。
2.コミュニティ防災の活性化
コミュニティでの防災活動を活性化さるために「地域防災協議会」をつくります。防災協議会では、住民たち自身で、地域の災害リスクについて勉強したり、雨季に備えてのどのようなことができるかなどを相談したりします。これによって、住民が災害から自分や家族、そして地域を守る力をつけることを促します。
3.市民防災活動推進センターの整備
「市民防災活動推進センター」は各区のクライメートスクールや地域防災協議会と密なネットワークを築き、学校や地域防災協議会の全ての防災情報を集めます。そしてこれらの情報を市全体に共有していくことで、より災害に強いバラナシ市をつくっていきます。
■事業期間
平成27年10月~平成31年1月(外務省日本NGO連携無償資金協力事業)
以降、企業・団体寄付、個人寄付、自主事業として実施
■対象地域について
バラナシ市は人口約116万人で、インド北部のウッタル・プラデーシュ州に属しています。市内には1,500もの寺院があるとされており、インドの中でも伝統文化の蓄積された伝統ある都市の一つです。以下の5つの区、それぞれにクライメートスクールを整備します。
■コロナ禍での苦難
また、コロナ禍において、バラナシ市は大きな問題を抱えました。バラナシ市はヒンドゥ教の聖地として火葬場が集積していることから、コロナ禍においても地域内外の人流が絶えず、新規感染者が慢性的に増加する事態が発生しました。特に、火葬がおこなわれるガンジス川沿岸には、コロナ禍によって通常の3~5倍、300~400体に及ぶ遺体が運び込まれ、2020年5月の段階でインド国内でもホットスポットとして認識されるほど膨大な数の命が奪われました。このような事態の中、親の死亡や失業により経済的な困難で学校を辞退せざるを得ないケースが相次いでいることが市内の5校の教員とのインタビューによって明らかとなっていました。
こうした事態を踏まえ、リコー社会貢献クラブ・Freewill事務局様よりご寄付を賜り、経済的な理由で退学の機器にあった32名の児童に奨学金が授与されました(詳細はこちら)。
■バラナシ市と京都市によるパートナーシティ提携意向書から2024年で10年
上記の活動を通じて生まれた交流や活動を持続させながら、次世代へとつなぐ必要性を感じています。
そこで、現在は京都市の小学生とバラナシ市の小学生をつなぎ、文化や伝統を大切にしながら、気候変動やその対策について話し合う日印(京都-バラナシ)子ども会合を2024年秋に開催する予定です。
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