OVERVIEW
概要
学校教員の防災教育実施訓練事業


ジョグジャカルタ特別州バントゥール県サンデン郡にて
2006年5月27日のジャワ島中部地震の被災以来、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州では国内外の多くの支援団体が緊急支援を経て学校防災教育の普及に焦点を当てた支援活動を行っています。
SEEDS Asiaが行った聞き取り調査によると(2008年10月実施)、教育関係者に対する防災教育訓練と、子供たちに対する防災教育実践との乖離が、防災教育の普及を妨げている一因であると考えられます。
この問題を解消するため、以下の3つの活動を企画、教育現場のスタッフが無防備な子供たちを守る、そんな防災教育の普及に取り組みました。
1.教育現場での学校教員に対する防災教育実施訓練
2.学校教員のための学校防災教育手引書の作成
3.学校防災教育に対する意識向上のためのワークショップ
ジョグジャカルタ特別州バントゥール県サンデン郡における
学校教員の防災教育実施訓練事業
背景・ニーズ
2006 年 5 月 27 日の震災以来、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州ではインドネシア国内外の多くの支援団体が多様な方法で援助・支援活動を行っています。緊急支援段階を経て、現在では多くの支援団体が学校防災教育の普及に焦点を当て、災害に対して特に脆弱である子供たちの命を守るための学校防災教育の意義や重要性を普及させる活動を行っています。
SEEDS Asiaのスタッフは 2008 年の 10 月 15 日から 24 日にかけてジョグジャカルタ特別州を訪れ、最も被災被害の大きかった県の一つであるバントゥール県で、学校防災教育の現状や他団体の支援活動について、県教育局や現地 NGO、および学校職員に対する聞き取り調査を行いました。
そうした事前調査の中で、様々な団体が学校防災教育に関する訓練のためのワークショップや質の高い学校防災教育用の教材の作成およびバントゥール県全土への配布を完了していることが明らかになりました。しかしながら、そうした数多くの訓練ワークショップの実施や質の高い教材の配布が行われたにも関わらず、聞き取り調査中に明らかになったもう一つの事実は、実際に学校防災を実施している学校数は未だにわずかであるという状況でした。
バントゥール県における事前調査や他団体からの資料収集に基づき、SEEDS Asiaは、バントゥール県の学校防災教育普及に向けて、以下のニーズを充足することを基軸に事業を展開しました。
(1)学校現場での実践的な訓練の必要性
聞き取り調査中に判明したことの一つは、学校教員に対する防災教育実施のための訓練は、そのほとんどがワークショップ形式で行われてきたということでした。また、ワークショップの形式ではない、実際の学校現場での訓練が行われた割合は 20%にも満たないということも判明しました。こうした状況を踏まえ、児童・生徒を交えたかたちでの学校現場での学校教員に対する実践的な訓練の実施が、教員が自信を持って学校教育を実施するために求められていました。
(2)教員の指針となる手引書の必要性
多くの支援団体によって、教員が学校防災教育授業で生徒に配布して使用するための優れた教材が作成されています。しかしながらそれらの教材は、その品質の高さにも関わらず、現在のところ広く使われているとは言い難い状況です。そうした教材が幅広くかつ効果的に使用されるためには、教員が防災授業を実施するに際しての指針となりうる手引書を作成・配布することが不可欠です。
(3)地域および行政からの理解・協力体制の必要性
学校長や学校教職員、州・地方政府職員、大学関係者、地元 NGO 職員、およびその他の学校防災教育に 関係する様々な主体からの理解と支持を得るという目的で、当プロジェクトでは 2 度のワークショップ を開催しました。
事業内容
当事業における主要な目的は、バントゥール県の小学校の教員が、学校防災教育を自信を持って自校の生徒に行えるようになるための能力強化や教育プログラムの開発を行うことにあります。この目的を達成するために、当事業では以下の活動を行います。
(1)学校教員に対する訓練
(a) サンデン郡の 3 つのターゲット校の学校教員に対して、彼ら自身の学校で、防災教育コンサルタントを通して学校防災教育実施に関する実践的訓練を実施します(第 1 回防災授業訓練)。
(b) 2-3 ヶ月後の異なる学期間中に、第 1 回防災授業訓練に参加した教員に対して、第 1 回防災授業訓練と同内容の訓練を再度実施します。しかし 2 回目の訓練では、学校教員は基本的に自立したかたちで主体的に防災授業を実施します。
(2)学校教員のための学校防災教育手引書の作成
教員のための学校防災教育手引書は、学校防災教育を教員がどのようにして実施すべきかについての詳細な手順を示すものであり、幾つかの学校防災教育プログラムについての手順が記載されます(学校防災教育プログラムの例:避難訓練、タウンウォッチ・防災マップ、防災に関する基礎教育、など)。当事業において実施される学校防災教育の内容は、バントゥール県下の小学校でのニーズ調査を反映したかたちで決定されます。
(3)学校防災教育に対する意識向上のための 2 度のワークショップ開催
学校長や学校教職員、州・地方政府職員、大学関係者、地元 NGO 職員、およびその他の学校防災教育に関係する様々な主体からの理解と支持を得るという目的で、当プロジェクトでは 2 度のワークショップを開催します。
(a) 第 1 回目のワークショップは、第 1 回防災授業訓練のすぐ後に開催されます。このワークショップは、主に事業対象地からの 100 名程度の防災教育関係者を招集しつつ、郡レベルでの学校防災教育に対する理解の促進および意識の向上を図ることを目的として開催されます。
(b) 第 2 回目のワークショップは、第 2 回防災教育が行われた後での、事業末期において開催されます。このワークショップは、主に県・州レベルでの学校防災教育に関する理解の促進を主要な目的として開催されます。事業対象地の郡やその周縁の郡、および県・州政府職員、地元 NGO職員、そして研究機関職員等の、ジョグジャカルタ特別州全土の防災教育関係者が、参加者として召集されます。
事業実施スケジュール
当プロジェクトは 2009 年 3 月から 2009 年 9 月末までの 7 か月間に渡って実施されました。
