長野市での事業概要
1. 事業を開始したきっかけ
SEEDS Asiaは、令和元年台風19号(令和元年東日本台風)による千曲川堤防決壊で甚大な被害を受けた長野市長沼地区へのニーズ調査の後、地区の復興対策企画委員会がコロナ禍の中でも復興まちづくりに向けて歩めるよう、支援を開始しました。
2. 事業地の特徴と防災課題
2019年の台風では、1日の降水量が年間の約1割に達し、千曲川の氾濫を引き起こしました。また、被災後の課題として、空き地や耕作放棄地の増加、急激な人口減少、地域コミュニティの維持、安心・安全な暮らしの再建など、予てからの問題が顕著になる中、まちの存続への懸念を多くの方々が抱えていることが初動調査で把握されました(詳細は本ページ下部に記載)。
3. 事業の内容とめざす姿
このような中、2020年度からは一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)並びにジャパン・プラットフォーム(JPF)の資金協力を得て、台風15号・19号被災地支援プログラムの一環として、「Withコロナ時代の復興まちづくり事業」を開始しました。
主な事業の内容は下記のとおりです。
1. 復興の担い手ネットワークの構築と知見の共有
被災後から間もなく、国内で新型コロナウイルスが広がり始めました。対面で集まることが難しい中でも復興まちづくりに向けた話し合いと情報収集が途絶えることがないよう、まずは長沼地区復興対策企画委員会メンバーへのタブレット端末とWiFi環境の整備支援をおこないました。また、復興まちづくりにおいて必要な知見を提供する専門家とオンラインでつなぐ「復興リレー講座」をおこない、国内の被災地からの教訓やヒントを専門家や国内の災害を経験したまちとつなぎ、講義や交流をおこないました。この講座は、刻々と変わっていく状況に合わせた多様なテーマを扱い、2022年度まで実施いたしました。
復興リレー講座の一部はYouTubeでも公開しています。
第1回 水と生きる私たちのくらし―ソフトとハードのベストミックスとは―
第2回 災害後のくらしの拠点を考える―私の住まいは私が決める?―
第3回 未来のために過去と向き合う―穂保地先の堤防はなぜ決壊したのか―
第4回 事例から学ぶ復興まちづくりへのヒント―まちの「モノサシ」とは何か?―
第5回 佐用町に学ぶ歴史文化資産を活かした復興まちづくり-つなぎたいまちの誇りは何か-
第6回 気仙沼市階上地区に学ぶ復興まちづくり-未来予想図をカタチにするために-(第1弾)
第7回 気仙沼市階上地区に学ぶ復興まちづくり-未来予想図をカタチにするために-(第2弾)
第8回 三条防災ステーションに学ぶ 賑わい創出と災害に強いまちづくり拠点の活かし方
第9回 丹波復興女性プロジェクト会の取り組み
第10回 東日本大震災被災地の語り部活動
第11回 これからの集落部のまちづくりの可能性
2021年度は、JPFの国内事業・令和元年台風被災者支援プログラムの支援を受け、長沼地区が復興まちづくりの未来像を描き、その実践に向けた第一歩を踏み出せるよう、現地に拠点をもちながら2023年度まで復興まちづくり活動の後方支援に努めました。
2. まちづくりへの住民の参画促進と、まちの課題・希望・想いを可視化
上記の復興リレー講座にヒントを得て、一人一人の意見に耳を傾けながら、未来像を描くことの重要性が明確になっていきました。そこで、「長沼式復興まちづくりの手法・ツール:復興まちづくりんご」を復興対策企画委員会と開発。復興対策企画委員会のコミュニティ検討会のみなさまと共に、児童から90代までの老若男女幅広い意見を収集し、可視化・分析する取り組みもおこないました。
3. 計画の具現化に向けた体制整備と能力強化
地域のまちづくりの多様な主体が参画する恒久的な体制が2022年度から新たに開始し、まちづくり委員会の事業化・実施・モニタリング体制の確立を支援する後方支援を行いました。また2023年度には兵庫県における復興リレー講座の視察版として現地での研修や交流活動を実施しました。
本事業では、コロナ禍で対話が困難な時代の中でも合意形成のプロセスを重視しながら、多様な主体が尊重され、意思決定に主体的に参画できる復興まちづくりを追求したことに特徴があります。
※なお、本取り組みについては、休眠預金活用事業/ジャパンプラットフォーム(JPF)より助成を得て実施しました。
ニーズ調査の報告
令和元年台風19号 被災者支援:台風19号被災地における状況調査(長野県)【日本】
台風19号により、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の方々にお悔やみを申し上げるとともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
11月20日~23日、専門家を含めたSEEDS Asiaの調査チームは、台風19号により甚大な被害を受けた長野県長野市 長沼地区及び豊野地区を訪問し、避難所の閉鎖を前に学校と地域の状況について調査を行いました。
長野市長沼地区は令和元年台風19号を誘因とする千曲川穂保地域の破堤によって、住宅だけではなく、支所並びに体育館、小学校や保育園を含めた公共施設も全て被災しました。また、りんご栽培がさかんな地域で生業への甚大な被害が見受けられました。被災校の子どもたちは近隣校に間借りしながら授業を受け、避難所となっている学校では、復旧に追われる中で授業の取り戻しや衛生環境の整備、地域や保護者との連携・連絡、点在する避難先からの通学時の安全確保、心のケア等、教職員や保護者の方々は多くの課題を抱えています。
こうした状況の中で、住民の方々からは、学校の再開を願う声と同時に、「このまちがなくなってしまうのではないか」という不安が口々に上がりました。未来のまちを担う子どもたちが、できる限り心身共に健やかにこのまちで時間を過ごすことができるよう、SEEDS Asiaは復興にむけた支援を開始することにしました。
今回の調査にあたり、ご多忙の中ご協力いただいた専門家の皆様、兵庫県教育委員会、長野市市役所、信州大学、各自治協議会や保護者の方々、多くの支援団体ネットワークの皆様に心から感謝申し上げますと共に、引き続きご協力・ご指導の程、よろしくお願い申し上げます。
※この初動調査は、特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)や個人の寄付者の方々からのご支援により実施しています。








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